海綿静脈洞壁硬膜のいずれかから発生し、海綿静脈洞内外それぞれに進展成長していくものもある。例えば海綿静脈洞外側壁硬膜より発生すれば、内頚動脈は内側偏移することがあり、一方で内側壁硬膜より発生すれば外側偏移していく傾向にある。T2 WIにてかなりのhigher intensityを来す場合は、angiomatous meningiomaなのか、次に示す海綿状血管腫なのか鑑別を要する。
本腫瘍は海綿静脈洞そのものが腫瘍化したものであるため、基本的には髄膜腫のように内頚動脈含めて重要構造物の偏移を認めないのが特徴となっている。外科手術による組織診断は、術中出血がひどく同部の摘出術は困難を極め、かつ脳神経麻痺を来す可能性が高い。一方で、SRSは同血管腫にはかなり効果的で、ほとんどの症例で著明縮小、かつ脳神経麻痺改善例も存在していることからかなり有用である。だからこそ、画像鑑別診断を熟知する必要があると考えている。
本腫瘍は海綿静脈洞内というよりは、傍海綿静脈洞病変として見ることの方が多く鑑別が必要となる。本腫瘍も海綿状血管腫同様かなり術中出血が強いことで知られている。また、メッケル腔内腫瘍として三叉神経鞘腫と見間違えることもしばしばあり、例えばForamen Lacerum(破裂孔)硬膜発生の同腫瘍は、メッケル腔内において前下方および外側下方にcerebrospinal fluid(CSF/脳脊髄液)の介在を見ることがあり良き鑑別となっている。
メッケル腔内血管周囲腫症例:腫瘍本体の
内部線量をかなり均一化して照射
外科手術・ガンマナイフ後の経時的
変化:かなり早期に縮小している
頻度としてはかなり少ないが鑑別診断必要な腫瘍となる。とくに外転神経鞘腫の場合は2つのタイプに分かれる:A)海綿静脈洞後方~前橋槽へ突出するタイプ、そしてB)海綿静脈洞前方~眼窩内進展するタイプ。上記でも示したように、外転神経の解剖学的特徴から、内頚動脈C4部外膜部が境となって、その前方と後方で腫瘍の進展が遮られていると推測している。動眼神経鞘腫は、髄膜腫や海綿状血管腫との鑑別がしばしば困難であり、SRS後の経時的変化にて初めて鑑別診断がつくことがしばしばある:髄膜腫であればほぼサイズ・intensity・神経症状共に不変、海綿状血管腫であれば著明縮小・神経症状改善の可能性あり、そして神経鞘腫であれば一過性膨大(中心部造影決失像)・複視など神経症状悪化の可能性あり。
海綿静脈洞〜眼窩における微小解剖:左/腱鞘輪部における外転神経鞘腫(紫)と周囲
正常構造物、右/ドレロ管における外転神経鞘腫の2タイプ(緑:前方型/ピンク:後方型)。
(図の出典:手術のための脳局所解剖学/中外医学社/馬場元毅先生より)